宇陀市は本当に減り方が早いのか他の市町村と比べながら考えてみる

榛原駅の改札を出て、国道165号の方角へ歩く。車の流れは多いのに、人の姿はほとんど見えない。そんな風景にふと触れたとき、頭に浮かんだのが「この町、減り方としてはどうなんだろう」という疑問だった。
奈良県内の他の市町村と比べて、宇陀市の人口減少のスピードはどのくらいの位置にあるのか。結論から言えば、宇陀市は奈良県の中でも、比較的速いほうに入っている。
ただし、一番速いかと聞かれると、それは断定できない。
市だけで比べるのか、町村も含めるのか、期間の切り取り方によって印象は変わる。見方次第で、景色は変わる。
宇陀市の人口はどれくらい減っているのか
まず、数字を整えて見ておく。私は住民基本台帳ベースの12月1日時点の数字で、令和2年と令和7年を比較してみた。[宇陀市人口統計]
令和2年の宇陀市の人口は29,248人
令和7年の人口は26,166人
5年間で3,082人が減ったことになる。率にして約10.5パーセント。ざっくり言えば、毎年2パーセントずつ減っている計算になる。
これを奈良県内の他市と並べてみると、宇陀の落ち方は強い部類に入る。たとえば、田原本町は同じ期間で数パーセント程度の減少にとどまっている。宇陀の1割という数字は、見過ごせないものだ。
けれど、宇陀市は中が広くて、エリアによって落ち方がかなり違う。
大宇陀は5年で約13パーセント減
室生も約14パーセント減
榛原は約9パーセント減
菟田野は約8パーセント減
つまり、場所によって体感が変わるのは当然で、減り方にも濃淡がある。
室生寺方面へ向かう途中、ぽつりと続く集落、人気のないダム周辺の風景。その空気が、実際の数字に重なってくるような気がしている。
宇陀の減少スピードに見える「癖」
宇陀市の周辺には、桜井市や橿原市、名張市といった、いわゆる中心都市に近い場所が多い。
そして、宇陀の特徴は「移動の強さ」だと私は思っている。
近鉄大阪線で大阪方面に出やすく、車なら国道165号で奈良盆地へ、国道369号で名阪国道方面へ、国道370号で大宇陀方面へ、すっと抜けられる。道が整っていて、出入りの自由度が高い。
でもこの便利さは、定住人口を増やす強さではなく、「出て行きやすさ」につながっている可能性もある。
進学や就職で外へ出るときに、迷わず出られる。
親の介護や結婚、仕事の都合で引っ越すときも、距離的なハードルが低い。
そういう選択の積み重ねが、滑らかに人口を減らしていく要因になっているのではないか。私はそう思っている。
市内に買い物の拠点はある。オークワサンクシティ榛原店、市立病院、市役所。
けれど、新しい住宅開発や定住志向の動きが榛原周辺でどれだけあるかというと、感覚としては薄い。
暮らしの核はあるのに、粘りが弱い。それが宇陀の癖なんじゃないか、とも感じている。
観光もまた、別の癖を持っている。
室生寺や龍穴神社、又兵衛桜といった有名な場所は季節ごとに観光客を集めるし、うだ・アニマルパークや道の駅も家族連れでにぎわう。
ただ、来る理由と住む理由はまったく別物だということを、つい忘れてしまいがち。
人を呼ぶ力があるのに、定住の動きにはつながっていかない。そんな切なさも、宇陀にはある。
同じくらいの人口でも減り方は違う
ここで、全国にある人口規模が近い自治体と比較してみたい。[全国市町村人口ランキング]
たとえば香川県の東かがわ市と、宮崎県の三股町。
この二つは、宇陀市と似たような規模の自治体だ。
東かがわ市
令和2年 29,684人
令和7年 26,732人
減少率は約9.9パーセント
三股町
令和2年 26,026人
令和7年 25,453人
減少率は約2.2パーセント
東かがわ市と宇陀市は、ほぼ同じような減り方をしている。
一方で、三股町はかなり緩やか。減ってはいるけれど、角度がまるで違う。
この違いをどう読むか。
私は、宇陀市は「減りやすい型」の側にいると感じている。
東かがわ市のように、数字でわかるレベルの落ち方をしている自治体と似た動きをしている。
対して三股町は、通勤圏として人を受け止める力があり、定住が下支えされているタイプ。人口規模が同じでも、都市との距離感や機能の受け方で減少スピードは変わる。
宇陀市は、送り出しの流れが強く、引き留める力がまだ弱い。
榛原駅の便利さが、結果的に移動の出発点として機能してしまっている。
この構図は、なかなかつらいところだ。
宇陀市の減少は速い。でも、その理由に目を向けたい
改めて問いに戻る。
宇陀市の人口減少のスピードは、奈良県内で速いほうに入っている。
5年で約10パーセント減という数字は、数字としても印象としても、軽くない。
けれど、県内で最速かというと、それは別の話になる。
町村まで含めれば、さらに急な落ち方をしている地域もある。
だから断定はしない。あくまで、傾向として「速い側」だと考えている。
そして、この減り方は事故のように突然起きているわけではない。
日々の選択の積み重ねの結果だと私は見ている。
道がある。電車がある。選択肢がある。だから出て行ける。だから減る。
もし、この減少スピードを少しでも緩やかにするなら、派手な施策ではなく、地味な工夫の積み重ねが必要だ。
榛原駅周辺で、生活が完結するような暮らしをつくる
点在する地域の魅力を、面としてつなげる
観光と定住をつなげる小さな仕掛けを増やす
かぎろひホールのような文化施設の夜を、ほんの少しだけ長く灯す
一つひとつは地味だけれど、そういうことを束ねることで、数字の落ち方を少しだけ変えられる。そう思っている。
断定はしない。でも、私はやっぱり、宇陀市は速い側にいると感じている。
そのスピードの理由を知ることが、次の選択につながるのかもしれない。